不妊治療について
当院は一般不妊治療(タイミング法・人工授精)から生殖補助医療(体外受精・顕微授精)まで全ての不妊治療を専門とするクリニックです。妊娠のしくみや治療の特徴、最新技術・検査についてご紹介します。
妊娠のしくみ
妊娠には大きくわけて排卵・受精・着床という3つのステップがあります。
1. 排卵
女性のからだは約1ヵ月に1回、卵巣から卵子が排出されます(排卵)。卵子は卵管采にキャッチされ卵管膨大部で精子を待ちます。
2. 受精
卵子と精子が卵管の中で出会うことから、命がはじまります(受精)。卵子の寿命は排卵から約1日、精子は2-3日といわれており、タイミングよく出会うことが重要です。
3. 着床
受精卵は細胞分裂を繰り返して成長しながら卵管をコロコロと移動します。ホルモンの影響でふかふかのベッドのようになった子宮内膜に着床し、ここで育っていきます。
不妊治療の種類について
主に「タイミング法」「人工授精」「体外受精」の3つの治療から、患者さまに最適な医療で妊娠をサポートします。
タイミング法
超音波やホルモン検査を行うことで排卵日を正確に推定し、排卵日に合った性交渉の時期を指導する治療です。
人工授精
超音波やホルモン検査を行うことで排卵日を正確に推定し、良好な精子を回収して(精製)、子宮内に注入する治療です。
体外受精
卵子を体外へ取り出し(採卵)、精子と受精させて(体外受精・顕微授精)受精卵を子宮に近い環境で育て(培養)、育った胚を子宮に戻す(移植)治療です。
体外受精について
体外受精とは、からだの環境を整えて卵子と精子の出会いをお手伝いする方法です。
体外受精とは
主に4つのステップがあり、卵巣から卵子を体外に取り出し(採卵)、卵子と精子を受精させ(媒精)、受精卵を子宮に近い環境で育て(培養)、育った胚を子宮に戻す(移植)という治療です。
体外受精の種類
体外受精には、卵子を入れたお皿に精子をたくさん振りかけて受精させる「通常の体外受精(C-IVF)」と、状態のよい精子を卵子に入れて受精させる「顕微授精 (ICSI)」の2つがあります。
顕微授精にも様々な方法があり、当院では精子を高倍率で観察することで、より状態の良い精子を見分けることができる「IMSI」を採用しています。
培養室での取り組み
培養室は患者さまからお預かりした大切な卵子、精子、受精卵を培養士が日々育み、見守っている場所です。出産率の向上は培養士の技術力も重要な要です。体外受精の内容をはじめ、培養士の技術や学会への研究発表、設備など情報をこちらに更新していきます。
私たちの治療の特徴
私たちは、自然周期法を柱にからだの負担を考え、自然に近い妊娠を目標に日々取り組み、さまざまな方法を取り入れています。
特徴的な治療法
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自然妊娠は、毎月1個の排卵で成立しています。自然に発育してくる卵胞を主体に採卵を行う、その考えが自然周期・低刺激法です。体への負担が少ない治療法です。患者様の卵巣機能、年齢を考慮して選択していきます。この方法は卵胞の発育に合わせなくてはならないため、年中無休体制で対応しています。
自然周期について
月経開始から採卵(排卵)前まで薬剤を一切使用せず、卵胞の成長とホルモン値の変化から採卵日を決定していきます。排卵直前にスプレキュア点鼻薬(GnRHa)だけで排卵を誘起し、成熟した主席卵胞を採卵します。患者さまの持っている卵巣機能を生かし自然なリズムの中で良質な卵子を育てる、体に優しい治療法です。
低刺激法について
クロミッド周期:
生理3日目からクロミッドを内服し自然排卵を抑制するとともに、必要に応じて周期途中から少量のFSH製剤を併用して体が選択してくれた卵子を必要数だけ育て採卵します。薬剤使用時は、患者さまの卵巣機能を考慮しながら慎重に選択し、最小限の使用量としています。良質な卵子を作ろうとする力を利用した治療法です。レトロゾール周期:
生理5日目からレトロゾールを内服し女性ホルモン(エストロゲン)を低下させることで、卵巣に強い刺激を与えずに複数の卵子を育て採卵します。クロミッドよりもマイルドな排卵誘発効果を促す治療法です。 -
独自開発されたを採卵針を使用し、従来の採卵針(17ゲージ)に比べ約1/2の太さの採卵針(21ゲージ)を使用しています。また、針の先端部分は特殊な方法で加工されており、卵巣組織へのダメージを最小限に抑えるように工夫されています。この採卵針では痛みや出血も軽度なため、採卵時の全身麻酔処置は必要ありません。また、体に負担をかけず数分間で採卵が終了するので、採卵後短時間の安静時間で(20-60分程度)で当日帰宅が可能です。
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精子頭部にはDNAが含まれており、受精だけでなくその後の胚の発育や着床にも大きな影響を与えています。IMSIを用いて精子頭部を観察することで、空胞がない(空胞が小さいなど)良好な精子の選択を行うことができます。
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成熟した卵子の細胞の中には紡錘体と呼ばれるものが染色体を囲んだ状態で存在します。IMSIを行う際に紡錘体を傷つけると正常な受精卵を得ることができません。当院では、特殊な顕微鏡(紡錘体可視化装置)を用いて紡錘体の位置を観察しながらIMSIを行うことで、安全な顕微授精を行っています。
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患者さま自身の血液からPRP(多血小板血漿)を作製したのち、さらに濃縮させた成長因子を子宮内もしくは卵巣内に直接注入する方法です。血小板由来の成長因子は、細胞の成長をうながす物質や免疫にかかわる物質が含まれており、着床不全や卵巣機能の低下が改善される効果が期待されています。
PFC-FD療法のリスク・副作用
体外受精の採卵と同様の方法で細い針を刺して子宮内もしくは卵巣にPFC-FDを注入しますが、採卵時と同等の出血や感染のリスクがあります。また、全ての方に効果があるとは限らず、胚移植まで至らない場合もあります。 -
タイムラプスインキュベーターとは 培養している胚を一定時間ごとに撮影し、胚の成長過程を観察できるインキュベーターです。胚の状況を外部のモニターで確認できるため、インキュベーターの外に出す必要がなく、胚への負担軽減が期待できます。(詳細説明)
各種検査
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- ◆性ホルモン
- E2 (卵胞ホルモン)
- P4 (黄体ホルモン)
- LH (黄体化ホルモン)
- FSH (卵胞刺激ホルモン)
- PRL (乳汁分泌ホルモン)
- βhCG (ヒト絨毛性ゴナドトロピン)
- ◆甲状腺ホルモン
- TSH (甲状腺刺激ホルモン)
- FT4 (遊離サイロキシン)
- TPOAb (抗甲状腺ペルオキシターゼ抗体)
- ◆感染症
- クラミジア
- 風疹抗体
- HBs抗原定性 (B型肝炎ウイルス検査)
- HCV3RD (C型肝炎ウイルス検査)
- HIV抗原・抗体 (AIDSウイルス検査)
- RPR定性・TP抗体定性 (梅毒検査)
- ◆その他
- ANA (抗核抗体検査)
- AMH (抗ミューラーホルモン検査)
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- 抗CL-β2GP1抗体
- 第Ⅻ因子凝固活性
- プロテインC抗原
- プロテインC活性
- LAC
- プロテインS抗原
- 抗PE抗体 lgG
キニノゲン添加
キニノゲン非添加 - 抗PE抗体 lgM
キニノゲン添加
キニノゲン非添加 - 抗カルジオリピン抗体
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- 子宮通水検査
- 子宮卵管造影検査(フェムビュー)
- フーナーテスト
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- 子宮内膜受容能検査(ERA)
- 子宮内膜マイクロバイオーム検査(EMMA)
- 感染性慢性子宮内膜炎検査(ALICE)
- 子宮内フローラ検査
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- ヘルパーT細胞⇒Th1/Th2(免疫寛容に対する検査)
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- PGT-A(不妊症および不育症を対象とした着床前胚染色体異数性検査)
- PGT-SR(不妊症および不育症を対象とした着床前胚染色体構造異常検査)
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精液量と1mlあたりの精子濃度、運動率、正常形態率を調べていきます。
当院では、以下の場合「精子凍結」を行います。
- 採卵当日に採精ができない可能性がある場合
- 精巣内精子や精巣上体精子を保存する場合
- 精子濃度や運動率がかなり低下している場合
精子凍結とは
精子を-196度で凍結し、保存することを精子凍結といいます。 半永久的に凍結保存することが可能です。
精子凍結のリスク・副作用
凍結精子を融解(解凍)すると運動率が低下するため、顕微授精の施行となります。凍結および融解操作の過程で精子にダメージが加わり顕微授精が困難になる、追加で凍結精子の融解が必要になる可能性があります。
(凍結精子を用いた体外受精により出生した児の異常発生率が、通常の体外受精の児より上昇することはありません)
(凍結精子を作成することが患者様並びにそのご主人様への身体的リスク・副作用をもたらすことはありません)
クリニックの治療実績
妊娠率は年齢に応じて変化します。私たちは、質の良い卵子を採卵し、症例によって培われた培養技術で、妊娠率の向上を目指しています。
当院では、2008年2月の開院から2023年までに11,887名の方が妊娠しています。
妊娠に至った治療法の内訳
妊娠に至った治療法の内訳(2019年~2023年)
卵巣刺激別の発育卵胞数と採卵個数(2023年)
1.保険採卵での成績(平均年齢37.1歳)
2.自費採卵での成績(平均年齢43.5歳)
体外受精で出産に至った移植法
(2008年~2022年までの実績)