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生殖補助医療(ART)

生殖補助医療(ART)とは、採卵や採精で得られた卵子や精子を体外で受精させ(体外受精や顕微授精)、得られた受精卵(胚といいます)を体外で培養したのちに、子宮の中に移植する(胚移植)、といった不妊治療のための一連の医療技術のことをいいます。

体外受精(IVF)とは

卵子を体外に取り出し(採卵)、体外で精子と受精させ、受精卵(胚)を子宮内に移植する治療法です。1978年にイギリスで卵管の通過性に問題のあるケースで体外受精が行われ最初に出産に至り、その後精子に問題のある夫婦も対象となり適応が広がりました。

日本では1983年、最初に成功例が報告されて以来、体外受精によって生まれる子は年々増加し続け、2015年には5万人を超えるまでになりました。

日本産科婦人科学会の報告によると、下のグラフはその年に行った周期の延べ数となりますが、2023年の日本のART治療は総治療周期数561,664周期と過去最高となっています。IVF周期、ICSI周期は前年の2022年とほぼ横ばいとなっていますが、FET周期(凍結胚移植周期)がさらに増加していることがわかります。

ARTによる妊娠での出生児数は85,048人と過去最高を記録し、このうち95.0%の80,774人が凍結融解胚移植(FET)による出生児と報告されています。2023年の出生児数は727,277人だったので、約11.7%つまり8.5人に1人がARTによる出生でした。昨年の2022年ARTデータブックでは、10人に1人の割合だったので更に増えている

当院の体外受精について

当院での体外受精の特徴は、薬をできる限り少なくして身体に負担をかけない治療(自然周期や低刺激法)を実践するため、365日年中無休の診療体制を整え、その周期に身体が選んだ自然に排卵される卵子を確実に採卵し、適切な環境下で受精・発育させ、高い技術で培養することで一番良い受精卵を的確に選び、最良の受精卵を確実に移植することです。

体外受精(IVF)の治療の流れ

1.当院で行っている主な排卵誘発

自然周期

(薬剤による排卵誘発を行わず、自然に発育してくる卵胞を目標に採卵を行う方法です。)

月経2-3日目の経腟超音波・ホルモン検査で決定され、自然に発育してくる卵胞から採卵を行います。(卵胞の発育具合により途中で少量の注射を投与する場合があります)排卵誘発を行わないため、通常採卵できる卵子の数は原則1個です。新鮮分割胚移植が可能です。

治療スケジュール

アロマターゼ阻害薬(フェマーラ/レトロゾール)を用いる方法

女性ホルモン(エストロゲン:E2)の産生を阻害する働きがあり、その結果FSH濃度を上昇させ、卵胞を発育させます。したがって、誘発開始前のFSHの値が高い場合には使用できません。主席卵胞(メインの大きい卵胞)以外の小卵胞からも成熟卵子が獲得でき、結果として複数個の卵子獲得ができることもありますが、主席卵胞を複数育てる方法ではありません。

当院では、(1)月経5日目から3日間内服する、(2)3日間の内服とリコンビナントFSH注射(自己注射)、(3)5日間の内服とリコンビナントFSH注射(自己注射)の3つの誘発法を患者さまの状態を診て選択します。基本的には新鮮分割胚移植が可能となります。

治療スケジュール

クエン酸クロミフェン(クロミッド)を用いる方法

月経3日目から5日間の内服、月経8日目と10日目にリコンビナントFSH(自己注射)を行い、月経12日目に卵胞発育を確認します。複数個の卵胞発育を目標に行います。

デメリットとしてクロミッドが5日間のみの投与(保険の場合)となるので、排卵へのスイッチの抑制がかかりにくくなり、月経12日目の診察時に排卵後になっている可能性や、排卵に向かってスイッチが入ってしまう可能性が他の誘発法に比べ高くなります。また複数個の卵胞を目標とするので、2のアロマターゼ阻害薬.に比べ、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の発症リスクが若干増える傾向にあります。

子宮内膜厚が薄くなりやすいことやOHSSのリスクを避けるため、新鮮分割胚移植には不向きであり、基本的には全胚凍結となります。

治療スケジュール

PPOS法(Progestin-primed Ovarian Stimulation)

月経開始早期からプロゲスチン製剤(黄体ホルモン)を投与することにより、LHサージ(排卵へのスイッチ)を抑制しつつ、排卵誘発剤(リコンビナントFSH)を連日自己注射することにより卵胞を発育させます。複数個の卵胞発育(8-14個位)を期待して行う方法で、当院で行っている卵巣刺激法の中では一度に最も多くの卵を育てる方法です。

そのため、当院で行う他の誘発法に比べOHSSを発症するリスクが高くなります。(Long法やShort法などの他の高刺激法よりはOHSS発症率は低い)採卵決定時のLH(黄体形成ホルモン)の値によっては、夜中に行う点鼻薬がHCG注射(自己注射)になることもあります。

月経早期からプロゲスチン製剤を使用するので、子宮内膜やホルモン環境が胚移植に適しておらず、全胚凍結となります。(新鮮胚移植はできません)

治療スケジュール

2.採卵

採卵とは排卵の直前に、経腟的に卵巣から卵子を体外に取り出す方法です。経腟超音波画像を見ながら卵巣の中の卵胞(卵子が入っている袋)に細い針を刺し、卵胞液とともに卵子を吸引します。その後、卵胞液中に卵子が入っているかを培養士が確認します。採卵時間の目安は5分から10分程度です。

当院では痛みや出血量の軽減のために改良した非常に細い針を用いて採卵を行っていることから、卵子が数個程度であれば基本的には痛み止めは不要です。

当院で行っている穿刺時の痛みのコントロールは痛み止めの内服・坐薬もしくは、腟壁への局所麻酔となります。静脈麻酔は行っておりません。痛みには個人差があるので不安な方は採卵決定時に医師とご相談ください。

3.採精・精子調整

採精について

当院のメンズルーム(採精室)で精液を採取してそのまま提出するか、ご自宅にて採精されたものを持ち込むことも可能です。ご自宅で採取した精液を持ち込む場合は、専用の採精容器にお取りいただき、おおよそ3時間以内に当院へお持ちください。過度な時間超過や温度変化は精子の状態を悪くする可能性がありますのでご注意ください。

精液検査

採精後30分ほど静置し、液化した状態の精液を検査や体外受精などに使用します。精液検査では専用のマクラーチャンバーなどの計算板を使用し、精子濃度・精子運動率・正常形態率などを調べます。

精子の精製

良好な運動精子を選別、集積し、不要物を除去するために不連続密度勾配法という方法で処理を行います。

精子を精製する専用の部屋で行います

4.媒精(受精)

媒精とは採卵された卵子と調整した精子を体外で受精させることを言います。当院では、以下の二つの方法で行っています。

通常の体外受精(精子が自ら卵子に入っていく方法 c-IVF)

培養液の入った容器に卵子を入れて、精子をふりかけ、自然に精子が入るのを待つ方法です。
複数の精子が入ってしまった場合、異常受精となります。双子になるわけではありません。

顕微授精(細い針を使い、一つの卵子に一つの精子を直接挿入する方法 ICSI・IMSI)

顕微鏡で観察しながら、細いガラスの針を使って、精子を卵子に入れることにより受精を目指す方法です。ICSIとIMSIがあり、IMSIはICSIが進化した方法で、ICSIよりも高倍率な顕微鏡を使用することで、高品質な精子を卵子に注入して受精させる技術です。妊娠率の向上が期待できます。

  • ICSI:Intracytoplasmic Sperm Injection の略称
    倒立顕微鏡を使用し、400倍の倍率で精子を選び、卵子に注入します。
  • IMSI:Intracytoplasmic Morphologically Selected Sperm Injection の略称
    倒立顕微鏡を使用し、最大限拡大した1000倍の倍率で精子を選び、卵子に注入します。奇形や空胞のある精子を避け、形態的に良好なより良い精子を選別することで、着床率の向上や流産率の低下が見込めます。

5.培養

媒精後の受精・細胞分裂

採卵した卵子と精子が正常に受精すると「受精卵」となり、細胞分裂を繰り返し、下記の図の通り「桑実胚」を経て「胚盤胞」に成長します。当院では採卵した卵子は最長で7日間培養します。

胚の評価

分割胚の評価

分割期胚は4段階で総合的に評価をします。下記の項目に該当するごとにグレードが下がります。
数字が小さいグレードの胚ほど移植した際の妊娠率が高く、評価の高い胚です。

胚盤胞の評価

当院では①形態、②成長速度、③採卵時の患者年齢の3点から今までの当院でのデータをもとに
総合的に判断し、A~Eの5段階で胚盤胞を独自に評価します。
Aの胚盤胞が最も評価が高く、妊娠しやすい胚となります。

①形態

胚盤胞を観察し、その見た目から胚盤胞の発育段階と状態を判断します。
ガードナー分類という方法を用いて数字とアルファベットの組み合わせで評価しています。数字は
胚盤胞の発育ステージを表すもので、胚の良し悪しではありません。凍結時に3~6のステージで
表します。アルファベットは以下の細胞のそれぞれの評価でA,B,C表記します。

②成長速度

凍結・移植が可能な大きさになるまでにかかった時間が短い方が良いとされています。例えば、同じ全長150µmの胚盤胞であっても培養5日目の胚と培養6日目の胚では、5日目の胚の方が良い評価となります。

③採卵時の年齢

胚盤胞のグレードと年齢は関係があります。年齢が上がるとグレードが良い胚盤胞はできにくくなります。

6.胚の凍結保存について

超急速ガラス化保存法という手法で凍結を行います。

細胞内部に含まれる水分子を凍結保護剤に置き換えて凍結します。細胞は氷の結晶ができてしまうと、傷ついて変性してしまいますが、凍結保護剤を入れることで胚を守りながら凍結できます。最後に-196℃の液体窒素の中に入れて保存・管理します。

一度凍結した胚の状態は、融解までの日数に関わらず半永久的に同じ状態で保存されますので、1回の採卵で複数個、良い胚があった場合は凍結保存することで、第2子や第3子の移植も可能です。

デメリットとしては、凍結した胚が融解する時にダメージをうけ、使用できなくなる場合があります。当院での確率は1%程度です。また、凍結保管期限は1年ですが、更新手続きをすればさらに1年間の延長が可能です。

7.胚移植

当院では多胎妊娠防止のため、単一胚移植(1回の移植に1個の胚だけを移植する方法)のみを行っています。

アシストハッチング:AHA(ふ化補助療法)とは?

AHAとは、透明帯から胚のふ化(ハッチング)を補助(アシスト)する技術です。移植時、胚を融解した際に行います。
卵子には透明帯と呼ばれるたんぱく質の層があり、成長した胚は透明帯を脱出し内膜に着床することで妊娠が成立します。胚は透明帯から脱出できなければ着床しません。
透明帯が厚くなる、凍結保存によって硬くなってしまった場合など、自力で脱出できなかったり、脱出するまでに時間がかかってしまうことが考えられます。透明帯からの脱出をスムーズにすることがAHAの目的です。当院では主にレーザー法を用いて透明帯をひ薄・開孔しています。

①分割期胚→ひ薄:薄くすること

分割期胚は割球同士の接着が弱く、透明帯に穴をあけると細胞(割球)が出てきてしまう可能性があるため、ひ薄にとどめ、胚盤胞になった時に少しの力で脱出できるようにします。

②胚盤胞→開孔:穴(孔)をあけること

胚盤胞は透明帯を開けて脱出をより容易にします。細胞と透明帯の隙間にレーザーを照射しますので、胚へのダメージはありません。

移植方法

専用のカテーテル(細く柔らかいチューブ)を用いて胚を移植します。
超音波で子宮内膜の状態を確認した後、カテーテルを入れるための外筒を入れます。移植胚を吸った状態のカテーテルを培養士が医師に手渡しし、カテーテルの位置を調整していきます。ベストな位置が決まったら胚を排出し、移植完了です。

①経子宮頚管胚移植(通常の移植方法)

②経子宮筋層胚移植(TOWAKO法)

子宮の入り口の状態によってはカテーテルが入りにくい場合があり、通常の方法で入らない場合は針を使って移植します。この方法は移植後の安静時間が長くなる場合があります。

移植中、移植胚がカテーテルに入るところを実際にモニター画像でご覧いただけます。

移植中は、超音波のモニター画像をご一緒に確認しながら進めていきます。

移植周期の比較

①新鮮分割胚移植…採卵後2~3日目の分割期胚を移植します。

メリット
  • 胚盤胞移植に比べ、胚移植のキャンセルが少ない。
  • 早期に子宮に戻すことができるため、本来の環境で胚の成長を促すことができる。
  • 凍結・融解の費用がかからない。
デメリット
  • 移植後、子宮内で胚が育たない可能性があり、胚盤胞移植に比べて移植あたりの 妊娠率がやや低い。

②凍結分割期胚移植…採卵後2~3日目で凍結した分割期胚を融解して移植します。

メリット
  • 早期に子宮に戻すことができるため、本来の環境で胚の成長を促すことができる。
デメリット
  • 凍結・融解の費用がかかる。
  • 良好胚でも凍結融解時に胚に負担がかかり、移植できない場合もある(1%程度)

③凍結胚盤胞移植…採卵後5~7日目で凍結した胚盤胞を融解して移植します。

メリット
  • 子宮内環境が良い周期を選んで移植することができる。
  • 分割期胚の移植に比べて移植あたりの妊娠率が高い。
デメリット
  • 凍結・融解の
  • 良好胚でも凍結・融解時に胚に負担がかかり、移植できない場合もある(1%程度)

凍結融解胚移植の周期

凍結胚を融解して胚移植するタイミングはいつでも良いわけではありません。事前に子宮内膜の状態を着床に適した環境(排卵後と同じ状態)に整えておく必要があります。当院では以下の2つの方法で行っています。

①自然排卵周期

自然な排卵を利用し、胚移植を行う方法です。(排卵誘発剤を使う場合と使わない場合があります。)

  • ご自身の排卵に合わせて胚移植の日程が決まります。
  • 排卵の状態によりますが、排卵の時期に受診していただき、1~3日後に分割胚、4~7日後に胚盤胞移植を行います。
  • 排卵誘発剤を内服する場合もありますが、使用する薬剤が少ない方法です。
②ホルモン補充周期

ホルモン剤を使用し、人工的に内膜とホルモン状態を排卵後の状態にして胚移植を行う方法。
(通常、排卵は起こりません)

  • 前の周期から卵胞が育たないようにピルを使って調整します。
  • 月経早期からホルモン剤を使用し、エストロゲン(E2)を上昇させ子宮内膜を整えます。子宮内膜厚、E2値が基準に達したら、黄体ホルモンの投与を開始し、排卵後と同じ状態を作り出し、移植に適した日程で移植を行います。
  • ホルモン剤の開始時期を調整することで胚移植日をある程度コントロールすることができ、胚のタイミングと子宮内膜のタイミングを合わせやすいことが特徴です。
  • 妊娠された場合は、ご自身のホルモンが分泌されるまでホルモン補充が必要です。その場合、判定日から約1か月半の間、原則5日毎の来院が必要となります。

移植決定から判定日までの流れ

①新鮮分割胚移植の場合
  1. 採卵日
  2. 採卵後2~3日目新鮮分割胚移植
  3. 移植後11~12日目判定日
  • 移植日の朝9時頃にメールで移植決定の連絡をします。その後11時に来院し、必要に応じて採血・内診を行い、移植の最終決定をします。
  • 移植後、5日目~6日目にホルモン測定などで来院する場合があります。
②融解胚移植の場合
②-1融解分割胚移植の場合
  1. 診察
  2. 融解分割胚移植
  3. 移植後11~12日目判定日
  • 診察にて移植日を決定します。移植日が決定したら看護師から説明があります。
  • 移植後、必要に応じて5~6日目にホルモン値測定などで来院する場合があります。
②-2融解胚盤胞移植の場合
  1. 診察
  2. 移植2~3日前SEET法
  3. 融解胚盤胞移植
  4. 移植後7日目判定日
  • 診察にて移植日を決定します。移植日が決定したら看護師から説明があります。
  • 移植の2~3日前にホルモン値測定などで来院する場合があります。
  • SEET法(先進医療)を希望される場合は、胚盤胞移植の2~3日前に来院が必要となります。

8.移植後から判定日まで

妊娠判定日について

判定は採血(HCG※)にて行います。(採血結果が出るまで約30~60分かかります)
HCGとは胎嚢の絨毛組織 (のちの胎盤)から分泌されるホルモンです。

  • 胚盤胞移植:移植後7日目
  • 分割胚移植:移植後11~12日目

妊娠反応陽性の場合

必要時にはエストロゲンやプロゲステロンの女性ホルモンを補充します。

自然排卵周期の場合

判定日から7~9日後(5週頃):胎嚢を確認し予定日をお伝えします。

  • 7週頃:胎児心拍を確認します。
  • 9週頃:頭殿長(胎芽の頭からおしりまでの長さ)が予定日とずれがないかを確認して卒業。
ホルモン補充周期の場合
  • 定後、約1か月半の間、基本5日毎の来院が必要となります。(採血、エコー、処方、注射をします)ホルモン値に応じて少しずつ投薬量を減らしていきます。ご自身のホルモンが産生され、投薬が不要となれば卒業となり、9週頃が目安です。

体外受精の副作用・合併症について

(1)卵巣過剰刺激症候群(OHSS)

卵巣過剰刺激症候群とは、不妊治療で使用する排卵誘発剤が卵巣を過剰に刺激することで、さまざまな症状が起こる病気です。
卵巣は通常2~3cmほどの大きさですが、卵巣過剰刺激症候群では卵巣が過排卵の状態になるため、卵巣の腫れや腹水の貯留、膨満感、吐き気、腹痛などの症状が起こることがあります。
重症化すると血管内の水分が少なくなることで腎不全や血栓症などの合併症を引き起こし、治療が遅れると命に関わることもあります。

OHSSになるリスクが高い方

35歳以下/痩せ型/多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)/AMH高値/HCG投与量の増加・反復投与/OHSSの既往など

自覚症状

お腹の張り/体重の増加(1㎏/日以上増加)/腹囲の増加/下腹部の痛みや悪心、嘔吐/喉の渇き/尿量の減少(500ml/日以下)

予防と対応

採卵後にOHSSが予想される場合には、採卵後にOHSS予防に効果があるといわれている内服薬を処方し、なるべく重症化しないよう努めます。万が一上記の自覚症状がみられた場合には、直ちに医師・薬剤師に連絡してください。

(2)感染

腟内を充分に洗浄・消毒して採卵を行い、感染予防として採卵後には抗生物質を処方しますが、稀に膣内の細菌などにより、感染を起こすことがあります。卵巣嚢腫(チョコレート嚢胞)がある場合、感染リスクが高まるといわれています。採卵後に、腹痛や発熱といった症状がみられた場合は、必ずご連絡のうえ、受診してください。

(3)腹腔内出血・腸管損傷

採卵では卵胞を穿刺するため、腹腔内に多少の出血はみられますが、ほとんどの場合そのまま自然に吸収されていきます。採卵時に重篤な腹腔内出血をきたすことは稀であり、その頻度は0.1%未満と報告されていますが、外科的な手術が必要になることもあります。

(4)膀胱出血(血尿)

採卵後の血尿は採卵時の膀胱損傷が原因と考えられます。膀胱損傷による血尿は、大半は薄くなって止まりますが、血尿の量が増える、濃くなるようであれば、ご連絡のうえ、受診してください。

(5)アレルギー反応

使用する薬剤(内服、注射、点滴、麻酔薬など)によりアレルギーを起こすことがあります。過去に薬剤でアレルギーを起こしたことがある方は事前にお申し出ください。

(6)局所の発赤・腫脹

注射部位が赤くなったり、腫れたりすることがあります。これらは一時的な症状であるため経過をみるようにしてください。特に黄体ホルモンの注射薬は、しこりになりやすく、注射部位を丁寧に揉むようにしてください。また、アレルギー反応の可能性もありますので、気になる方は医師、看護師にご相談ください。

(7)採血(点滴)に伴う神経損傷

採血のあと、指先に痛み・しびれが生じて残ってしまうことがあります。頻度は約1万回から10万回に1回程度とされています。通常は軽度で一時的な症状が多く、症状は1日もしくは1週間から3か月程度で消失すると言われています。採血をしている最中に指先の痛みやしびれを感じた場合には、すぐにお知らせください。

(8)多胎妊娠

多胎妊娠は単胎妊娠に比べ母子共にリスクが高い妊娠です。多胎妊娠は早産になりやすく、合併症(妊娠高血圧症候群、HELLP症候群、子宮内胎児発育遅延、血栓症など)を発症する可能性も単胎に比べ高くなります。
当院では多胎妊娠を避けるために胚移植は1個としていますが、1個の胚がその後の分裂の過程で双胎になることもあります。また、ご自身の排卵に合わせて凍結融解胚移植を行う場合は、排卵付近でタイミングをとると、移植胚とその周期の排卵による妊娠で双胎となることがありますので移植周期は避妊してください。

(9)異所性妊娠(子宮外妊娠)

子宮以外の場所に受精卵が着床することを指します。
胚移植は子宮内に行いますが、子宮内に着床するまでの間、胚は自由に動いています。胚盤胞は着床直前の状態で移植するので自由に動く期間は短いですが、分割胚の場合は一旦卵管にもどりその中で成長しながら子宮内に戻ってくるため、着床までに数日かかります。そのため異所性妊娠のリスクは分割胚のほうが高くなります。
異所性妊娠は妊娠反応が陽性に出たのち、胎嚢確認の時期に子宮内に胎嚢が確認できないことで疑われます。胚移植後、妊娠判定日頃から出血があり「生理がきた」と思っても子宮外妊娠の可能性がありますので、判定日とその7-9日後の胎嚢確認には必ず受診してください。
症状としては腹痛や出血があり、お腹の中で大量出血を起こすと命に関わることもあるので注意が必要です。原因はクラミジア感染や子宮内膜症による子宮・卵管・卵巣周囲の癒着や卵巣や卵管の手術などが考えられています。

(10)深部静脈血栓症

治療で使用するホルモン剤に含まれるエストロゲンには、血液を固まりやすくしてしまう作用があります。そのため服用により血液中のエストロゲン濃度が高くなることで血液が固まってしまい、血栓ができやすくなります。
特に特にリスクが高まるのが、40歳以上、肥満、喫煙、高血圧、糖尿病、高脂血症です。血栓症の既往のある方は必ずお申し出ください。

(11)血管迷走神経反射

交感神経と副交感神経のバランスが急激に乱れ、一時的に血圧低下やめまい、失神などを起こすことを血管迷走神経反射と呼びます。
血管迷走神経反射は、緊張や不安が強いとき、睡眠不足や疲労が溜まっているときなどに生じやすく、頻度は1%程度です。いつもは大丈夫であっても、体調によって誰にでも生じる可能性があり、不妊治療の検査、処置においては、採血・卵管検査・採卵などで起こる場合があります。

体外受精の保険適用について

令和4年4月から「生殖補助医療」については、採卵から胚移植に至るまでの一連の基本的な診療は全て保険適用され、患者さまの状態等に応じ追加的に実施される可能性のある治療等のうち、先進医療については、保険診療と併用が可能となります。また、「生殖補助医療」には年齢制限や回数制限、保険での治療開始時に婚姻関係にあるパートナーと同席での治療計画書を作成などの要件があります。保険診療中に自費診療を併用することはできません。

年齢・回数制限

治療開始日の妻の年齢 39歳以下 妻の年齢が43歳になるまで 胚移植6回
40~42歳 妻の年齢が43歳になるまで 胚移植3回
43歳以上 保険適用外

高額療養費制度について

医療機関等の窓口でのお支払いが高額となる場合、支払い後に申請いただくことにより1か月(1日から月末まで)に支払う医療費の自己負担額の上限(自己負担限度額)を超えた額が払い戻される制度です。(高額療養費制度)自己負担限度額は、被保険者の所得に応じて設定されます。

利用方法

①マイナ保険証を利用する

医療機関の窓口でマイナ保険証(健康保険証利用登録を行ったマイナンバーカード)を提出し、「限度額情報の表示」に同意する方法です。

②限度額適用認定証を利用する

オンライン資格確認未導入の医療機関等では、引き続き限度額適用認定証の提示が必要になります。

 

 

顕微授精(細い針を使い、一つの卵子に一つの精子を直接挿入する方法 ICSI・IMSI)

顕微鏡で観察しながら、細いガラスの針を使って、精子を卵子に入れることにより受精を目指す方法です。ICSIとIMSIがあり、IMSIはICSIが進化した方法で、ICSIよりも高倍率な顕微鏡を使用することで、高品質な精子を卵子に注入して受精させる技術です。妊娠率の向上が期待できます。

  • ICSI:Intracytoplasmic Sperm Injection の略称
    倒立顕微鏡を使用し、400倍の倍率で精子を選び、卵子に注入します。
  • IMSI:Intracytoplasmic Morphologically Selected Sperm Injection の略称
    倒立顕微鏡を使用し、最大限拡大した1000倍の倍率で精子を選び、卵子に注入します。奇形や空胞のある精子を避け、形態的に良好なより良い精子を選別することで、着床率の向上や流産率の低下が見込めます。

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